人事情報をオープンに
『カオナビ』の開発背景を教えてください。
私はカオナビを立ち上げる前、人事コンサルタントをしていました。そこで目にしたのは、営業部長が「新しく入社した人の書類をくれ」と人事部に来て、人事部長がその人の履歴書を「明日返してね」と渡す光景です。現場から見たらダメですよね。人事部はいいとしても、新人の配属先の上司が、目の前にいるその人物の経歴をすぐに確認することができない。これでは組織は活性化しません。
人事情報を人事部が閉じているのはまったく意味のないことだと私は思っています。
世の中には、給与管理などの計算ソフトはたくさん出ているし、アウトソーシングできる会社もある。その一方で採用、育成、配置などをシステム化する製品は当時は全然出ていなかったんです。需要はあるはずなのになぜだろう。これは事業にするしかないな、と決意して作ったのが『カオナビ』です。
私は前職で人事の仕事をしていたのですが、同じことを考えていました。給与計算や勤怠管理などの労務管理が人事の本来の仕事ではないはずだと。本当に必要なのは企業を成長させるための、「経営」の仕事。そしてそれは人事部のみが行う仕事ではなく、現場のマネジメント層ができる環境をつくるべきだと。
そんなときに柳橋と出会い、『カオナビ』を共につくることになったのです。
企業側にはすぐに受け入れられましたか。
我々がしていることは何かの突破口を開こうということではなく、ごく自然なことです。「クローズドをオープンに」ということ。情報・データというものは、みんなが使えるほうが価値が高まります。このシンプルな考え方さえ説明すれば、すぐに受け入れられました。
さすがに最初はこの考えを理解してもらえないこともありましたが、今は当たり前のように支持していただけています。
営業に行くと、社長室に全社員の顔写真が貼ってある企業があります。『これをシステム化しませんか?』というと、すぐに話が通ります。「人事情報を『カオナビ』でオープンにしてください。現場の部長も部下の顔と名前が一致してマネジメントもしやすくなりますよ」と話すと、「そうだよね。できるよね」となるのです。
経営やマネジメントは、社員個人の細かいデータよりも「誰だっけ?」と顔を思い浮かべるところから入るので、「このようなツールを待っていたんだよ」と言っていただけました。
人事に関してはクローズドにしなければいけないことと、オープンにしなければならないことに分かれますね。
情報をオープンにするためにはクラウドが適しています。クラウドで人材情報を共有すれば、北海道支社や沖縄支社にいる部長も出先にいてもスマートフォンで情報が見られます。クラウドでオープンにしたほうがいいというのは技術的合理性があるのです。